Never let me go [洋書を読む]
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく(Amazonより抜粋)基本的に大小関わらず文学賞にはまったく興味がないのですが、それでも好きな作家さんや興味がある作家さんが受賞されるとなんだかうれしいですね。
そんなわけで、映画に続き原作を読みました。
映画を観てて思ったのですが、翻訳では少しわかりづらい部分もありますが、言葉の選び方が素晴らしいと思いました。donationって、確かに臓器「提供」という意味がありますが本来の意味は「(善意による自発的な)寄付」。donationという言葉が出るたびに、自発的ではない現実に違和感を覚えます。また、臓器提供を終えて死ぬことをcompletionって言ってますが、単なる「終了」というより完了・完成したという意味。臓器提供のために作られたクローンプロジェクトの結末を表すのにピッタリでゾクゾクします。さらには、ヘールシャムはhail(歓迎・称賛する)+sham(模造品・偽物)。先生たちも単なるmaster/mistressではなくてguardian(保護管・後見人)。シンプルな言葉なのに、これだけでこの世界の恐ろしさが感じられます。
全体的に表現はシンプルだし、とっても読みやすいのですが、このような言葉や出来事の奇妙さでこれだけの世界を表現できてしまう力に感動しました。ノーベル文学賞がどれだけすごいものなのか分かりませんし、今後受賞された方の作品を読むこともないと思いますが、今回こんな形でいつか、いつか読もうと思っていたキッカケが得られてうれしかったです。
他の作品も読んでみたいですね。今回はあらすじを知ってから読んだので、次は前情報なしで読みたいです。
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