言語学は科学である [言語学・日本語学を学ぶ]
言語学は科学である―「象ガ国会デ宿題ヲ忘レル」不思議への招待
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ある著名な百科事典で「科学」を引くと、自然科学の解説が八割を占める。「言語などという、極めてあいまいなものが、科学の対象になどなるわけがない」という意見がある。「言語学とは、いわゆる語学のことだ」と思っている人たちがいる。現在、言語学は、日本の大学組織の中でほとんど例外なく人文科学の、それも文学に位置づけられている。果たして、このような言語学に対する扱いは正当か、不当か?どうして言語学は科学なのか?(裏表紙より抜粋)
私が今まで言語学を学んできて、今のところ一番首をかしげるのは「どうして『言語学は科学である』とそんなに強調するのか」という部分なのですが、そんなこともあって図書館でこの本を見つけた瞬間に手にとって、貸し出しカウンターに向かいました。
そして、私のそんな疑問の答えがこの本に書いてありました。
自然科学の分野では多くの科学者を動員した長期にわたる厖大な量の観察・実験の蓄積があったからこそ、現在の仮説中心の学問にも説得力があるのだということを忘れてはいけない。ひるがえって言語学を見ると、残念ながら現状では自然科学に匹敵するような観察や実験の歴史があったとは、とうてい考えられないありさまである。ということは、つまりは言語学にとって仮説中心のツッ走りは、まだまだ時期早尚だと結論づけられることになる。
言語学が、観察と実験によって得られた客観的なデータを操作することによって解明される経験科学であるという部分を否定しているわけではないのですが、仮説中心のツッ走りだという感はありました。ただそれは私がまだまだ勉強不足だからだと思っていましたが、それだけではなかったのかもしれませんね。また、私の中で「科学=自然科学」のイメージがあることも否定しません。ただ、実際に「言語学は自然科学」というような意見も何度も聞いた事があるので、上で書かれている「自然科学」と同等に扱えるものなのか?とは思っていました。
だから、「言語学は科学である」という理由を何度説明されて、言いたい事は理解できても、いまいちしっくりこなかったのだと思います。
ただ、20年の間に状況も変わってきていると思いますし、今後、ツッ走りではないと納得できる日がくるかもしれないし、それを楽しみにもしています。
いずれにしても、今までの疑問が解消して、少しすっきりしました。
こんにちは。
研究者の方ですか?
私は植物分類学を専攻していたので、言語学とは逆の難しさがありました。つまり、再現実験のしようもないのに理系と呼ばれるのです。
そういう目で見ると、実験科学的なモデルを目標にしているかのような、本の表題や引用文の内容には、疑問を感じました。
“実験で確かめられるべき仮説”と“観察から発想された仮説”とが引用文の中で混乱しているような気もします。
私の実感にそっていたのは、『野外科学の方法』(川喜田)等での三分法です。観察を積み上げて仮説を発想するのが、野外科学です。
・実験科学
・書斎科学:哲学・数学・理論物理学・・・
・野外科学:分類学・生態学・民族学・比較言語学・マーケティング・・・
by plant (2009-07-05 07:37)
plantさん、コメントありがとうございます。私は研究者ではありません。
野外科学や書斎科学という名前は初めて聞きました。
ただ、うまく説明できないのですが、言語学といっても色々な分野・手法がありますので、どこを専門にするかでその人の「科学としての言語学」のとらえ方が違うのではないかと思ってます。
そして、その個々のとらえ方を否定しているのではないのですが、総称して「言語学が科学である」と説明される時の理由には、私の限られた言語学の知識ではどこか疑問が残るのです。
by niko (2009-07-11 10:12)